古里の歴史を題材に町おこし 古里の歴史を題材に町おこし

 平成18年4月、鹿児島県日置市伊集院町に古式設計による白壁の蔵がお目見えした。当敷地はおよそ650年前、南北朝時代の激動期に建立された、寺院「長寿庵」の跡地である。この期にあって当時の島津藩、島津貞久は幕府側の立場で南朝方勢力と戦闘を交えた。島津氏の守護管国内で南朝方に味方したのが、肝付谷山氏ら島津氏、以前に土着していた領主たちと島津一族でありながら地頭であった鮫島、当地の伊集院氏であった。

 彼らは一族の相剋、嫡庶間の対立によって南朝方に加担したと思われるが、その後、島津氏に敗れ、後、島津氏に服従することになる。これらを時代背景として、この敷地の一角に伊集院地方の戦国武将や「日月」と刻まれた最高位の僧侶「日月灯明」の石塔が現存し、保存され、旧伊集院町教育委員会から文化財指定を受けている。

 長寿庵とは「長遠なる寿命を尊ぶ」仏への信仰から「長」と「寿」をとって長寿庵としたものではないか。この地の当主、新福正志(56歳)は、以前難病にかかり通算約2年6ヶ月の闘病生活を体験した。この病との闘いの中で、啓示をうけたのが、焼酎「長寿庵」であった。この生命としての長寿の光明にあやかるべく、10年試行錯誤し、芳醇で甘い、銘柄「長寿庵」が醸され誕生した。原料と製法にこだわり時間をかけて醸し出されたものである。

 当人は田舎の山河、田園そして昔のたたずまいをこよなく愛し、自称、田舎人である。そして特に好むのが囲炉裏を囲み人に礼を説く素朴な人物。

 この蔵は焼酎の小売販売事務所であり、貯蔵庫であり、そして皆様が呑み歓談できる場所であるという3つの機能をもっている。当人の思いをこめた第二の人生の象徴で存在感を漂わせている。

 この焼酎が古里の歴史を舞台に歴史が生んだ産物として地方の伊集院町から全国に発信し、全国の皆様に味わっていただければ、そして地方の活性要素の一つになって欲しいと願っております。

長寿庵酒造落成記念式典に於いて
平成18年5月27日